カタログだけでは分からない、ディスペンサーメーカーの見極め方

生産技術のアドバイザーをしている平尾です。

前職は電子部品メーカーの生産技術部で、18年ほど基板への接着剤やシール材の塗布ラインを担当していました。

今は独立して、年に30社ほどの製造現場を回っています。

その中でよく相談されるのが「ディスペンサー装置を入れたいが、どのメーカーを選べばいいか分からない」という話です。

カタログを何社分も並べて、吐出量と粘度レンジを表にして比べている。

その気持ちはよく分かるのですが、私の経験上、そこで比べた項目は選定の失敗要因とあまり関係がありません。

今日は、カタログの外側にある見極めポイントを3つお話しします。

カタログスペックは「使える条件」しか教えてくれない

カタログに載っているのは、対応粘度は何mPa・sまで、吐出量は何mlから何mlまで、といった性能の枠です。

これは大事な情報ですが、あくまで「その範囲なら使える」という話にすぎません。

現場で起きるトラブルは、たいてい枠の中で起きます。

私が過去に見てきた不具合の傾向はこうです。

  • 冬になると吐出量が落ちる(材料の粘度が温度で変わる)
  • フィラー入りの材料で摩耗が早まり、半年で計量精度が崩れる
  • 硬化剤側の可使時間を読み違えて、ミキサーが詰まる

どれもカタログの粘度レンジには収まっている条件です。

つまり、比べるべきは装置の枠ではなく、その枠の中で起きることをメーカーがどこまで把握しているかです。

見極め方1:自社の材料で実機テストをさせてくれるか

一番はっきり差が出るのがここです。

自社の材料を持ち込んで、実機で塗ってみせてくれるかどうか。

これを断る、あるいは「カタログ値で問題ありません」で済ませようとするメーカーは、私は避けています。

材料の挙動は、樹脂メーカーが同じでもロットや配合比で変わります。

実際に吐かせてみないと分からないことが多すぎるのです。

テスト設備を持っているメーカーは、その申込フォームを見れば姿勢が読めます。

たとえばナカリキッドコントロールのテストルーム申込フォームでは、主剤と硬化剤それぞれの粘度を測定温度つきで、さらに配合比率・比重・フィラーの有無・ポットライフまで記入させています。

ここまで聞いてくる会社は、粘度の数字ひとつでは判断できないと分かっている側です。

逆に、材料名と吐出量だけ聞いて機種を出してくる会社は、あとで揉めます。

なお、吐出方式の違いから整理し直したいという方は、ディスペンサー装置の意味や吐出方法をまとめた解説ページを先に読んでおくと、テスト依頼のときの会話が早くなります。

見極め方2:粘度と精度の話が「測り方」まで通じるか

商談の場で、粘度の話を数字だけで進めようとするメーカーは要注意です。

液体の粘度測定方法はJIS Z 8803として規格化されており、測定方法や温度条件によって出てくる値は変わります。

規格の内容は日本規格協会のJIS Z 8803:2011で確認できます。

「その粘度は何度で、どの方法で測った値ですか」と聞き返してくる担当者は、現場を知っています。

吐出精度についても同じです。

計量値がどこまで遡って保証されるかという話は、突き詰めれば国家計量標準につながります。

産業技術総合研究所の計量標準総合センターが校正・依頼試験として供給している領域ですが、ここまで踏み込んで説明できるメーカーは信頼していいと思います。

材料そのものの知見も見ておきたいところです。

接着剤や樹脂の挙動は日本接着学会のような学術領域の話でもあり、企業会員が7割を超える学会です。

装置屋なのに材料の話が通じない、という会社は案外あります。

見極め方3:装置を入れた後の距離感

導入時より、導入後のほうが長いです。

私が確認しているのは次の3点です。

確認項目見るべき理由
拠点が物理的に近いか停止したとき当日中に人が来られるか
社歴と製品の継続年数消耗部品の供給が続くか
第三者の評価が外部にあるか自社アピール以外の裏付けがあるか

3つ目は補足します。

B2Bの産業機械には一般的な口コミがほとんど存在しないので、代わりに公的機関の選定実績を見ます。

先ほどのナカリキッドコントロールでいえば、近畿経済産業局が公開している関西ものづくり新撰の選定製品一覧に同社の名前が載っています。

自社サイトの受賞歴は当然よく書かれているものなので、こういう外部の一覧で確認できるかどうかを私は見ています。

まとめ

ディスペンサー装置の選定でカタログを比べる作業は、実は最後の絞り込みでしかありません。

その前に見るべきは、実機テストをさせてくれるか、粘度と精度の話が測り方まで通じるか、そして導入後の距離感です。

装置は10年単位で使います。

スペック表の数字より、その数字を説明できる人がいるかどうかを見てください。

若いころの私は、カタログの粘度レンジだけ見て機種を決めて、冬に吐出量が合わなくなって冷や汗をかきました。

同じ思いをする人が減れば嬉しいです。

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